相続税における投資信託の評価方法|評価日・時価の決め方を完全解説
相続税における投資信託の評価方法|評価日・時価の決め方を完全解説
相続人となったとき、被相続人が保有していた投資信託がある場合、その価値をどのように評価して相続税を計算するのか気になりませんか?「投資信託の時価っていつの時点の価格を使うの?」「複数の投資信託がある場合は?」といった疑問は、相続税を計算するときに必ず出てきます。
実は、投資信託の相続税評価は評価日の時価(その日の基準価額)で統一的に決まるという、比較的シンプルなルールです。ただし、評価日の選び方や非上場の投資信託の場合など、いくつか注意点があります。この記事では、投資信託の相続税評価について、初めての方でも安心して理解できるように、具体的な計算例を交えて解説します。
投資信託が相続財産に含まれる理由と基本的な扱い
相続が発生したとき、被相続人が亡くなった時点で保有していたすべての財産が相続対象となります。預金や不動産と同じように、投資信託も相続財産としてカウントされます。
重要なポイントは、相続税の基礎控除を超えるかどうかを判断するときに、投資信託の価値が関係することです。基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。例えば相続人が3人なら基礎控除額は4,800万円。この金額を超える遺産がある場合に相続税がかかります。投資信託が100万円あれば、その100万円が遺産の評価額に加わるため、基礎控除を超える可能性が高まります。
また、配偶者がいる場合、配偶者は「1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い金額まで非課税」という配偶者の税額軽減の特例が適用できます。この場合も、投資信託をいくらと評価するかが税額を大きく左右します。
投資信託の評価日と時価の決め方
投資信託の相続税評価でもっとも重要なのは、「いつの時点の価格を使うか」という評価日です。
相続税では、被相続人が亡くなった日(相続開始日)の時価で評価します。投資信託の場合、毎営業日に基準価額が公表されるため、相続開始日の営業日の基準価額をその日に取得した価格とします。
例:4月15日(月)に被相続人が亡くなった場合
- 4月15日が平日なら、4月15日時点の基準価額を使用
- 4月15日が土日祝日なら、直近の営業日(4月14日の基準価額など)を使用
投資信託の基準価額は投資信託協会や各販売会社のウェブサイトで確認できます。相続税申告時には、この基準価額を証拠として保存しておくことが重要です。
上場投資信託(ETF)と非上場投資信託の評価の違い
投資信託には大きく分けて2種類があり、評価方法に違いがあります。
上場投資信託(ETF:Exchange Traded Fund)
上場ETFは株式取引所に上場しており、毎日売買されています。相続税評価では、相続開始日の終値(または取引がない場合は直近の終値)を使用します。これは株式の評価と同じ方法です。取引所での価格が公開されているため、評価がもっとも明確です。
非上場投資信託(公募・私募ファンド)
一般的な公募の投資信託(銀行や証券会社で購入できる投資信託)は非上場です。この場合、相続開始日の基準価額が唯一の評価額となります。基準価額は各ファンド会社から毎営業日公表されるため、その数字をそのまま使用します。
どちらのタイプでも、評価は比較的明確で、土地のように「形状によって減額できるか」といった複雑な判断が不要な点が特徴です。ただし、基準価額の変動が大きいファンドの場合、相続開始日がいつであるかで評価額が大きく変わる可能性がある点は注意が必要です。
複数の投資信託を保有している場合の計算
被相続人が複数の投資信託を保有していることは珍しくありません。その場合の評価方法を確認しましょう。
各投資信託を別々に評価する
投資信託Aが100万円、投資信託Bが150万円、投資信託Cが80万円あれば、相続税評価額は合計330万円となります。各ファンドの相続開始日の基準価額に保有口数を掛けて、すべて足し算するだけです。
相続開始日の基準価額は、投資信託の販売会社や信託銀行から発行される「相続開始日時点の残高証明書」に記載されていることが多いため、その数字を使用すれば問題ありません。もし証明書がない場合は、投資信託協会や各ファンド会社のウェブサイトで公表される相続開始日の基準価額を調べて、手元の「口数 × 基準価額」で計算します。
複数通貨の投資信託がある場合
海外株式ファンドなど、外貨建ての投資信託を保有している場合は、相続開始日の為替レート(税務当局が公表する相続開始日の対顧客直物売買相場の中値)を用いて日本円に換算します。これは仮想通貨などと異なり、一般的な外貨換算と同じルールです。
投資信託と相続税申告・納税のポイント
投資信託を保有していた場合、相続税申告でいくつか気をつけるべき点があります。
申告・納税期限は相続開始から10ヶ月以内
相続税の申告・納税期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。投資信託がある場合も、この期限内に相続税の申告書を提出する必要があります。投資信託は売却して現金化しやすい資産なので、納税資金の確保も比較的容易ですが、評価額確認に時間がかかる場合は早めに準備を始めることが大切です。
申告書に投資信託の詳細を記載
相続税申告書には、投資信託の名称、基準価額、口数、合計評価額を記載する必要があります。投資信託協会の統一コードなど、ファンドを特定する情報も求められることがあります。販売会社や信託銀行から取得できる「相続開始日時点の資産明細書」があれば、申告がスムーズです。
複数の販売会社で分散している場合
被相続人が複数の銀行や証券会社で投資信託を保有していた場合、すべての残高を把握する必要があります。相続人が把握していないファンドがあるかもしれないため、銀行や証券会社に照会して確認することをお勧めします。
名義変更のタイミング
投資信託は相続開始後、相続人の名義に変更する必要があります。評価額確定後に速やかに名義変更手続きを進めることで、その後の売却や管理がスムーズになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 投資信託の相続税評価で、購入価格ではなく時価を使う理由は?
A. 相続税法では、相続財産の価値は「相続開始日の時価」で統一的に評価することと決められています。これは、相続税の課税ベースを公平に保つためです。購入価格が1,000万円でも、相続開始日の時価が600万円なら、相続税評価は600万円となります。逆に利益が出ていても、時価で評価するルールは変わりません。
Q2. 基準価額が毎日変わるのに、決算日を選べないのか?
A. いいえ、評価日は相続開始日で固定されます。決算日を待つことはできません。これは土地や株式と同じで、相続税評価は「その日の価値で」と法律で決まっているためです。ただし、相続開始日が土日祝日の場合は、直近の営業日の基準価額を使用することになります。
Q3. 評価額を確認するために、投資信託を売却する必要があるか?
A. いいえ、売却は不要です。相続開始日の基準価額を確認するだけで評価額は決まります。相続人が売却するかどうか、いつ売却するかは別の判断です。ただし、評価確認のために、販売会社や信託銀行に「評価額確認」を依頼することはお勧めします。
Q4. 投資信託で損失が出ていた場合、相続税対策に使えるか?
A. 投資信託の価値が購入価格より低い場合、その時価が相続税評価額になります。ただし、それ自体が「節税」になるわけではなく、単に遺産の総額が低くなるというだけです。相続税対策として投資信託を活用したい場合は、生前に贈与する(年間110万円までの暦年贈与は非課税)などの方法が考えられます。
Q5. 海外の投資信託の場合も、同じ評価方法か?
A. はい、基本的には同じです。ただし、外貨建ての投資信託の場合は、相続開始日の為替レート(税務当局公表の中値)を使って日本円に換算する追加のステップが必要になります。為替変動が大きい時期の相続では、この換算結果が大きく影響する可能性があります。
まとめ
投資信託の相続税評価は、以下のポイントを押さえておくことが大切です:
- 評価日は相続開始日に固定される。その日の基準価額(上場ETFの場合は終値)がそのまま評価額になります
- 複数の投資信託がある場合は、各ファンドの基準価額をそれぞれ計算してから合計します
- 相続税申告期限は相続開始から10ヶ月以内。投資信託の評価額確認に手間取らないよう、早めに販売会社や信託銀行に依頼しましょう
- 配偶者がいる場合、配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い金額まで非課税)の対象となり、投資信託の評価額が税額計算に影響します
- 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数)を超えるか確認することで、相続税申告が必要かどうかが判断できます
投資信託の評価は比較的明確なルールですが、複雑な遺産構成や相続税申告の対象となるかどうかの判断は、税理士に相談することをお勧めします。正確な評価と適切な節税対策により、相続税の納税額を最小限に抑えることができます。まずは、被相続人が保有していたすべての投資信託をリストアップし、相続開始日時点の評価額を確認するところから始めましょう。